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アブラクサスを見た日

今日は空が近い。紫外線なのか、太陽そのものなのか、どちらでもいいほど眩しい。 あれから一度も空腹を感じていない。食べることをやめたわけではないはずだ。誰かと一緒にいた気さえする。 雲を突き抜け、富士山はとうに足元だ。 ...
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跳ねる影を追う

今日は風向きが安定していた。雪面に、細い足跡が斜めに走っているのを見つけた。まだ新しい。 息を殺し、風に逆らわず、音を立てずに距離を詰める。 岩陰の先で、白い影が跳ねた。ウサギだ。逃げられかけたが、深雪に足を取られた一...
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銀河鉄道

銀河鉄道を見た。闇に浮かぶ車窓の一つだけがやけに明るくて、その中で誰かがこちらに向かって手を振っていた。 見覚えがある顔だった。ずっと探していた顔だった気がする。 私は声を張り上げた。けれどその声は、星のざわめきに呑まれていっ...
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地図無き領域

GPSはもう必要ない。位置が分からなくても、進むべき方向は身体が知っている。 沢沿いを登る。足音、岩肌の冷たさ、湿った空気。五感が研ぎ澄まされていく。 しばらくして、水が切れた。前方は岩の壁。でも、壁を見た瞬間にわかった。 ...
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再びの吹雪

雪は昨日より深くなっていた。踏み固めた跡もすぐに埋まる。視界は短く、音はすべて風に持っていかれる。 尾根を越えた先、雪面を横切る影が見えた。オオカミだ。一匹だけではない。私の間近を、こちらを気にすることなく通り過ぎていく。 ...
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文明との再会と別れ

風が一晩中、テントを叩き続けた。雪が積もる気配はなかったのに、薄明かりの中で外に出ると、一面の白だった。 踏み抜かないように慎重に進む。膝まで埋まるほどではないが、足を取られる雪質だ。 陽が少し顔を出す。思っていたよりも高所に...
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雪嶺で遭遇したライチョウ

この尾根の先に妻がいる。理屈じゃない。地図は読めない。ただ、足だけがその方向を選び続ける。 風が横殴りに強く、雪の粒が顔に突き刺さる。ホワイトアウト寸前で、自分の動きに遅れて視界がついてくる。ピッケルの金属音だけが、位置の証明だ。 ...
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生物多様性

天候:曇り気温:15〜20℃行動:6:40〜16:05 昨夜はテント泊。湿度が高く、寝袋に少し結露。朝はパンとチーズ、コーヒーで済ませた。 橋を渡った先の踏み跡は相変わらずはっきり続いている。妻の判断と歩幅を想像しながら進む。...
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洞穴を抜ける

潮の気配を感じた。標高2,000mを越えているはずだが、錯覚だろう。 行く手を塞ぐ大きな岩壁に、穴が開いていた。潮気を含んだ風が吹き抜け、濡れた空気が頬に張り付く。洞穴の奥から、波が砕ける低い響き。それでも私は迷わず中へ進んだ。地図...
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野生生物との遭遇

夜明け前に支度を済ませて、尾根づたいに北へ向かった。空気が乾いていて、昨日の廃集落とはまるで別の山のようだ。標高が上がるにつれ、木々の背が低くなり、風が急に冷たくなる。汗が一気に冷え、肩からザックの重さが増す。 獣の気配は濃い。足跡...
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