跳ねる影を追う

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今日は風向きが安定していた。
雪面に、細い足跡が斜めに走っているのを見つけた。
まだ新しい。

息を殺し、
風に逆らわず、
音を立てずに距離を詰める。

岩陰の先で、白い影が跳ねた。
ウサギだ。
逃げられかけたが、深雪に足を取られた一瞬があった。

その背に飛びつき、両腕で押さえ込む。
暴れて雪が舞った。
喉の鼓動が手に伝わるほど近い命。

確保。

安堵で膝が少し震えた。
腹が空いていると、判断が鈍る。
早めに火を起こす。

雪で毛を濡らさないよう気をつけながら処理する。
肉は薄く、骨が多い。
けれど、噛むたびに力が戻る。

旨いとか不味いとかではない。
身体が受け入れている。
それが全てだ。

手袋に残った血の匂いを雪で拭い、明日のために少し歩く。
上へ。
もっと上へ。

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