アブラクサスを見た日

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今日は空が近い。
紫外線なのか、太陽そのものなのか、
どちらでもいいほど眩しい。

あれから一度も空腹を感じていない。
食べることをやめたわけではないはずだ。
誰かと一緒にいた気さえする。

雲を突き抜け、富士山はとうに足元だ。


地上は遠い。
振り返る意味を忘れた。

とっくに気づいていた。
私は何かに呼ばれている。
それが太陽なのか、それとも別の何かなのか。

ヘリが無視した理由も、今ならわかる。
私はもう救助対象じゃなかった。

ただ登ればいい。
風がそう言っている。
いや、風じゃない。

声がする。
上だ。
もっと上へ。

ザックが軽い。
あれほど重かったはずなのに。
中に何が入っていたのかすら、思い出せない。

だが問題ではない。

私は──生きている。
ちゃんと生きて、ここにいる。

さあ、次の一歩だ。
太陽のすぐそばまで。
行ける。

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